騒がしき我が家わがわや 早蕨のひとめを真似て戯れのうた
思うまま砕きな心はひとつしかないとしてもね今しかないから
人生は断絶ではなく連続と思い知る君を勇者と呼ぼう
どうせ春は心が赤ん坊だから正しさなんて別にいらない
どこまでもほっつき回るさ 君がため泣くことができたこんな夜には
どうしてか愛すべきを愛さずにいて生きてゆけると思っていたのね
あの頃は心ばかりが雲のうえ揺蕩っていた、あるいは、今でも。
君転ぶ三寒四温のなすままに梅もほころぶ春もほころぶ
それがもし雨に打たれる自由でも失うことは怖いだろうか
今冬はあったかいから冬のこと忘れられるはずだったのにね
年々に背負う悔いの実重くなり口には渋くただ丸まる背
いつか今日も過去になってしまうから また会う日まで釣る釣る文字港
小松菜と茄子と大根、油揚げ、豆腐買うかは神のみぞ知る
冷蔵庫帰ればケーキああ今日も暗い夜の歩道に立っている
「哀しみは胃もたれするからこの唄をミルクにしてね」ママの書き置き
どうせ歌えないのならば人工で 無敵になれるギターを添えて
君に会えたらいつだってもうそれでなんでもよいのだ 雨も愛せた
降り注ぐ月の光と夢 いつか君のためにも泣けたらいいな
夕空に入道雲が溶けていく 今年も君の死に様を見た
なんにせよ寂しいくらいがちょうどいい、と安寧名乗る煙に抱かれる
急かすよに戦慄く蝉の声のまま走り抜けたい一度きりの夏
千鳥足 塔に登ったその日から家守と共にこう生きている
離れないあの梅雨終わりに胸の奥ググと掴んだ創り手の手が
雨上がる今朝は少しの夏の日のにおい でもまだ蝉は鳴かない
背伸びして死ぬに良い日を探してる赤いくるぶし蹴ってやりたい
コンタクト痛くて外し歩いた夜 広がる秘密の花火大会
ちょっとだけ心やさぐれちゃったから今日のおかずはチキン南蛮
もうずっとやまない雨に君がさす傘のうちかかる虹を見ている
昨日ゴミつつくお前が今日の風いなして飛ぶがやけに立派で
もも・さくら・寝坊助つばきも薔薇さえも諸手を上げて春受け止める
南口月を見ながら森へ行く永遠みたいな59分
手の中にまだ君があると思うとところかまわず泣きたくなるね
青に消ゆ白き鉄塊見送るは群れなす黒い空の先輩
宵闇にまどろみを売る寒がり屋 鼻を抜ける夏祭りのにおい
という夢だったのさといつ言われるか怯えるほどに眩しい世界
輝きの残滓を煌めきと名付けて時を止めぬは勇気とほめて
雪なんて降るはずもなく現実が小雨に少しあたためられる
手袋の君、ひたむきに白い息、耳たぶの赤、冬、いたいけ、目
これ以上あの日から剥がれゆく前に爪先に露目は閉じたまま
だしぬけに風吹き抜ける伽藍堂を突きつけよる霜の朝にて
踏みしめた新参者のアスファルトうそぶきながらまたたきやがり
うたにきく「生きてたかだか数十年」耳から離れず早十数年
生きて良い時はとっくに過ぎていて快晴呑気なおまけの人生
運命は私の手にある 熊の子が山のふもとでくるくる笑う
永遠の淵に私の根が巡る枯れてはくれぬあなたの薔薇の
息絶えた私の棺の燃えるとき黄色い薔薇が残れば良いのに
知ってるよ私の中に君がいてあの日一緒に来てくれたこと
船言うに千切れゆく雲の柔らかさを磯にも分けてくれりゃええにと
青山の夏の眠りも妨げる台風一過の容赦なき熱
ほんとうにわたしが神様だったからあなたに出会ってしまったのだろ
サーカスに捨て子に出された鈴の子よどうしてそんなに鳴いているのか
思い出は赤い拳銃ピカピカのはじまりの街また来て四角
青空を初めて見た様に笑ってる ようやく出会えた倍数のキミ
一本をとうとう引いたハインリヒ 握る毛糸の色は何色
信じてた電車のドアが足元まで来なかったみたいな顔をしてるよ
海霧と潮の香りで包んだら君の重荷もトビがさらって
せいたかの紫陽花たちに向かい立つ単管パイプがはないちもんめ
「悔いもないかも」と呟く夢を見たヤクルト1000も飲んでないのに
「ではどこへ行くつもりなの」夏だけが私に私の轍を踏ませる
「海へ行くつもりじゃなかった」かもしれないけど山へ行くはずでもなかった
望遠で月をひと突き落とし球 空より暗い山のポケット
水色の光 最中に立つあなた 「会えた」と思う唯一のとき
飛行場行きの終バス揺らしてさ やったろうじゃんナイトフライト
GoogleやYoutubeの方がよっぽど私が生きてることを知ってる
あまりにも鮮明な夕暮れを背に蓋をする今年も冬が去る
ベランダにピンクの悪魔干していたあの部屋が空っぽになった朝
春ウララ天の凧糸乱高下 つぼみも枯れ葉と同居している
めいっぱい憂鬱を張ったバスタブに金平糖のバスボムひとさじ
春風と落陽の混ざる倦怠が聞こえぬように蓋するカナル
人生よ夕暮れてゆけ誰そ彼と鏡に笑うその日くるまで
夢見れば変わらずそこに丸くなる 六月生まれの放たれぬ愛よ
高架上浮かぶ黄色いヘルメット そこのけそこのけスタンドバイミー
花瓶の中小さな小さな水泡で確かにきみが息をしている
忘れえぬ忘れえぬ忘れえぬよ いったことよりそこにいたことが
プラチナのベールの向こう燃えさかり破裂しそうな太陽のふち
憎んでも憎んでも余りある十二月の空が目も耳も潰す
我が目には雲がなくても朧月 そう悪くもない視力検査C
バンギャルがライブ終わりに池袋西口で踊る夜のような雨
死ぬ前に思い出すのはきっと君それでいいそれだけでいいから
白封筒フリルの少女の便箋の もう消えたかなフリクションの字
竜の子と褪せる景色に目を凝らす 麦稈真田の呼ぶ声がして
考えに考えて葦になったのさ勝手に例えに使わないでよ
傘ささぬ君と一緒に暮らせたら愛などいらぬ畳んで帰るよ
あおはるのファミマ軒先座り込むお前の頭撫でてやろうか
壁の向こうに声が聞こえた あの日からずっと待っていたあなたの声
青い鳥は方眼ノートの顔してた 定規使わぬ枠枠の線
ゆけあらしぽつりぽつりの彼岸花 此岸を見やり首伸ばす赤
道すがら朝顔セットのバラバラ事件ビニルの中に逝く夏を見る